2010年11月07日

金利を引き上げ

どの国もインフレの波はかぶりたくない。

たとえば、日本としても円安が続けば金利を引き上げざるを得なくなります。

そうなれば、アメリカに資金が流れなくなるので、アメリカも金利を引き上げます。

アメリカが上げれば、ドイツやイギリスも、そして日本も再引き上げをする。

こうして、各国がスパイラル的に金利を引き上げていくことになります。

このような状態を競争的金利引き上げという。

こんな状態になれば、各国の政策協調路線は完全に崩れてしまう。

世界経済は乱気流に巻き込まれてしまうでしょう。

そうならないためには、アメリカが財政赤字の削減についてしかるべき成果を上げるしかありませんでした。

国防費を抑え社会保障予算を削るとか、増税を実施して歳入を増やすとかいった、各国が納得のいく財政赤字削減のプランをはっきり示して協力を求めるという形しかありませんでした。

ところが、ブッシュ政権の赤字削減計画はいまのところ掛け声倒れに終わっていました。

そのため、世界経済もこうしたジレンマを引きずりながら進まざるを得ないのです。

インフレ圧力は主要国に共通した大いなる悩みなのです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年11月06日

競争的金利引き上げ

しかし、アメリカにとって都合のいいドル高は、同じようにインフレに悩んでいる他の国々には都合が悪いのです。

なぜなら、日本を例にとると、ドルが高くなれば円は安くなるわけだから、円建てでみた輸入物価が上昇してインフレ加速につながります。

量的な関係としては、輸入にブレーキがかかり、輸出に拍車がかかります。

インフレに悩む日本としては、輸入を増やし、何とかインフレを緩和したいにもかかわらず逆方向に進むことになります。

ドイツにしてもイギリスにしても事情は同じでした。

だから、アメリカにとって当面都合のいいドル高は、日本やヨーロッパからみればインフレの押しつけにほかならない。

このように、それぞれの国でインフレ圧力が強まっている状態では、通貨の動きをめぐって利害関係が激しくぶつかり合うのは避けられない。

いい方をかえれば、この局面では各国が政策協調を行うことは極めて難しくなっていました。

では、各国が自国のインフレ対策を最優先させはじめたらどうなるか。

実際、1989年四月のG7ではインフレ防止が各国の課題として掲げられました。

大木一雄(経済クリティック)
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2010年11月05日

食糧問題

OPEC総会での減産決定もかなりの線まで守られているようだし、ソ連、中国などの非OPEC産油国もこれに足並みをそろえてきていました。

このため、原油価格は予断を許さない状況になっており、世界のインフレにおよぼす影響を心配しなくてはならなくなった。

原油以外にもやっかいな問題はいくつかありました。

ひとつは、食糧問題です。

このところの世界的な異常気象が原因で世界の穀倉地帯は豊作が望めない状態となっており、穀物を中心に食糧価格が上昇しそうな気配になっていました。

また、非鉄金属の価格も、世界的な好景気の影響で上がってきました。

使いすぎ、というマクロ的なインフレ構造に陥っている上に、原油やその他の一次産品の価格も強含んでいるという状態の中で、いかにインフレ圧力が顕在化するのを阻止するかがアメリカ経済の課題なのです。

これに対するひとつの解答がドル高というシナリオでした。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年11月04日

インフレ圧力

インフレ圧力に悩まされているのは日本だけではない。

世界中がいまこの問題に頭を悩ませているのです。

アメリカの場合をみてみよう。

「貯蓄不足=使いすぎ」のアメリカ経済は常に潜在的なインフレ圧力を抱え込んだ状態にありました。

1982年11月以来の長い長い景気拡大の中で、インフレ・プレッシャーは極めて高いものになっていました。

1980年代の半ばまでは、ドル高のためにこのインフレ圧力を輸入供給によって減圧することができました。

これは既にみた通りだ。

同じようなやり方をすることが、日本に求められていました。

アメリカはインフレ圧力を抱えたままの状態にあるから、ドル高を修正して輸出を伸ばし、対外収支の改善を実現するという政策も思い切って推進することはできない。

原油価格が強含みの状態で推移していることもインフレ材料だ。

かつては、1バレル=10ドルを割ったこともあるWTI価格が、最近は12ドルを超えるところまできました。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年11月03日

金利

金利が上がればアメリカの景気は、現在すでに軟弱になっているので、それをきっかけに本格リセッション(景気後退)に向かってしまう可能性がある。

金利高によって株価と債券相場が急落するかもしれない。

っまり、ハードランディングだ。

ところが、1990年は中間選挙の年なので、景気を急激に後退させるのはブッシュ政権にとっては非常にまずい。

したがって、金利は上げたくない。

むしろ、金利をもっと下げて景気拡大を持続させておきたい。

しかし、日本が上げてしまった場合は、仕方がないので、アメリカも競争的に金利を上げ、資金の流出を防がざるを得ない。

防がざるを得ないのだが、景気後退は招きたくないので、何とかして上がった金利をまた下げたいという圧力が加わる。

その圧力は結局、日本に向けられることになりそうだ。

つまり、日本は輸入を拡大してインフレ圧力のガス抜きをするようにという要求をつきつけられるということだ。

確かに、インフレ圧力がなくなれば、金利を上げる必要はなくなります。

日本が金利を上げなければ、アメリカも利上げの必要がなくなるというロジックです。

輸入を拡大しなさいということは、アメリカ側にいわせれば、日本市場の障害を取り除きなさいということです。

つまり、日米構造問題協議の議題に上がっているようなことを日本は一刻も早く実行しなさいということになります。

結局、日本がインフレ対策に乗り出せば、アメリカからの市場開放圧力が強まり、日米摩擦はいっそう激しくなります。

日米構造問題協議でのアメリカの攻勢は非常に激しいものになると予想できるわけだ。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年11月02日

日本が金融を引き締める

インフレ抑制ということだけに焦点を当てる限りでは、かなりの思い切った利上げが必要でしょう。

公定歩合でいえば6〜7%というところか。

この辺までいかないと効き目がない。

金融政策しか頼れるものがないということになると、この程度の上げ幅は覚悟せざるを得ないとみられる。

ただ、国際的な関係を考慮に入れると、日本はあまり金利を上げられない立場にありました。

というのは、日本の余ったカネは、いまアメリカの債券を買?たり、ニューヨークで株を買ったりという形でアメリカに流れており、そのカネがアメリカの資金不足を補っていました。

ところが、日本が金融を引き締め、アメリカとの金利差がなくなったり、日本の方が金利が高くなったりするとアメリカへの資金フローは順調に流れなくなります。

これでは、アメリカが困ってしまうわけだ。

もし、日本が、国内のインフレ対策が先決だと金融引き締めを断行すれば、アメリカは対抗して金利を上げ、資金の逆流を防ぐ必要が出てきます。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年11月01日

黒字

ここまで来ると、もう一つ別の疑問が出てくるかもしれない。

話が後戻りするが、先行きにここでみたような問題があるのだとすれば、市場開放がインフレ圧力からの解放にも通じるという先ほどの主張にも問題があるのではないかという指摘が出てくるかもしれない。

自分で自分のクビを締めることになるのではないかという疑問が提示されそうだ。

それはその通りだが、実はこのような形で日本の過剰貯蓄、輪出超過の構造が調整されていくことこそ、マクロ的な不均衡が解消されていく姿にほかならないのです。

アメリカが「双子の赤字」を放置しておくことが許されないのと同じように、日本の「双子の黒字」も解消されなければならない。

それを拒絶して、これまで通り「双子の黒字」の構造を維持していこうとすれば、世界経済の均衡回復に逆行する存在として糾弾されることになってしまうのだ。

大木一雄(経済クリティック)
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2010年10月31日

サービス化の行き着く先

サービス化の行き着く先にはこんな状況が待ち受けているかもしれないのです。

こんな姿になっていくとすれば、日本経済は果たして現在の黒字大国、貯蓄大国としての立場を将来にわたって維持していくことができるのかという疑問が出てくる。

予告篇的にいっておけば、実際に日本が貯蓄超過のポジションをいつまでも維持していくのは難しいと考えられるのです。

その理由のひとつは、ここで述べてきた空洞化の問題です。

企業の海外進出が進み、一方国内ではサービス化が進んで、物理的生産能力についても技術力についても製造業の空洞化が深刻化するということになれば、どうしても輸入に依存する度合が強くなるから、対外収支の黒字は縮小していくでしょう。

このことは、一方で、国内におけるいまの貯蓄超過の状態も、しだいに貯蓄不足のポジションに変化していくことを意味していました。

日本の「双子の黒字」が「双子の赤字」に変身していくのです。

この変身を促すだろうと思われる要因が実はもうひとつある。

それは、今後、日本の人口高齢化が急速に進んでいくという問題です。

高齢化が進めば働いて貯蓄を増やしていく若い人々の比率が低下して、逆に貯蓄を取り崩して生活する高齢者の割合が高まってくる。

その結果、日本のカネ余りの度合も低下していくことになるとみられるのです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月30日

研究開発の空洞化

サービス化の話をもう少し進めてみようと思います。

産業のサービス化が進むと日本経済の潜在能力が低下するといった。

これは、単に物理的な生産能力の問題だけではない。

将来を展望すると、日本企業が研究開発の空洞化現象に悩まされるようになる可能性があるのです。

実際、大手企業の中には、国内で人材を得られそうにもないところから、アメリカやヨーロッパに研究所をつくり、そこを足場に外国の優秀な人材を集めて研究開発を進めようとする動きが顕著になってきていました。

日本経済をここまで押し上げてきた技術開発力の将来が必ずしも楽観できなくなりつつあるのです。

だから、空洞化現象といっても、日本から工場が逃げ出していく空洞化だけではなく、労働資源の非効率的な配分が原因で研究機能が流出していくという「研究開発の空洞化」も心配しなければならない状況が出てきているのです。

やがては、日本人はみんなクリ!ンで収入の多いサービス業に集中してしまい、労働条件の厳しい製造業は外国人労働者が一手に引き受けるという状態になってしまうことさえあり得ないことではない。

このようになってしまえば、緻密な技術力に基盤をおく日本産業の強さは根底からつき崩されてしまう。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月29日

ブラック・マンデー

ドル安だけではどうにもならないことがしだいに明らかになりはじめました。

そのため、1978年2月のルーブル合意の時点では、「現行水準程度で為替相場を安定させる」ということで各国が協調行動をとることになったのです。

そうはいっても、アメリカの構造不均衡は相も変わらずの状態だったから、結局は、またしても無理をしてドルに対する需要を強くするというやり方しかありませんでした。

具体的にはまず為替市場への各国通貨当局の介入という方法がとられました。

しかしながら、この介入という手法は所詮は一時しのぎの対策であって、通貨に対する需給関係を根底からくつがえすことができるものではありません。

そこでやむなく、もう一度アメリカの金利が他の国々の金利に比べて相対的に高い状態をつくり出そうとした。

プラザ合意以前の状態に逆戻りしようとしたわけです。

この作戦にしたがってアメリカが公定歩合を引き上げたのが1983年の9月でした。

日本はすでに利下げを実施していました。

ここで西ドイツも金利を引き下げれば、アメリカと日.独との間の金利格差が拡大することによってドルに対する需要が強まり、ドル相場が安定するだろうと考えられたのでした。

ところが、ここで西ドイツが利下げを拒否してしまいました。

その後の展開はまだ読者の記憶に新しいところでしょう。

当時のべーカー財務長官が西ドイツのやり方に対して不満を表明し、このことがきっかけとなって10月19日のニューヨーク市場で株価が大暴落を演じた。

ブラック・マンデーです。

市場の実勢に逆らって、ドルに対する需給関係を人為的にコントロールしようとした結果、市場からの手痛い反撃をくらうことになったのです。

大木一雄(経済クリティック)
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2010年10月28日

為替レートと購買力

為替レートは通貨の購買力とその通貨に対する需要の強さという二つの要因で決まることを思い出していただきたい。

購買力という点でいえば、当時のドルが強くなるのは明らかにおかしかった。

ところが、アメリカが資金不足で金利が高いということで、アメリカに資金が集まり、そのことがドルに対する需要の増加をもたらしてドルを強くしてしまったのです。

逆にいえば、アメリカがドルを強くしておきたいと思えば、どうしても金利を高くしておかなければならないという状態にあったわけです。

ドル需要が強くなったといっても、それはあくまでもアメリカの金利が高かったからであって、かつてのドル不足の時代のように、各国がそれぞれ自国の経済を維持するために必死でドルを欲しがったのとは根本的にわけが違っていたのです。

これではアメリカ以外の国々はたまらない。

アメリカの金利高につられて自国の金利も上昇してしまいます。

アメリカにどんどん資金が流れていってしまうのだから、これは防ぎようがありません。

しかも、ドルが高いということはその他の国々の通貨の為替レートが相対的に低くなるということだから、輸入物価が上昇してインフレ圧力が高まってしまう。

インフレと高金利という二つの重荷をアメリカのおかげで背負い込まされることになったのです。

こうして各国の不満がつのりにつのった結果、1985年に入って、それまでは強かったドルが一転して再び急落しはじめることになった。

この事態を何とか収拾するために取り交わされたのがプラザ合意だったのです。

この時、各国は「秩序ある」ドル高是正をめざすことで合意しました。

これによって、アメリカは輸出拡大と輸入抑制による貿易赤字の改善を実現できると考えたのでした。

それがうまくいかなかったのは既述の通りだが、いずれにしても、こうしてみれば、当時においてなぜドル高からドル安への転換が起こらなければならなかったかがおわかりいただけるでしょう。

ここまでの一連の話は、「プラザ合意後の円高をくいとめることはできなかったものだろうか」という問題提起からはじまったことを思い出していただきたい。

それは所詮、無理な注文だったのです。

当時、不均衡を調整しようとする経済のエネルギーは圧倒的にドル高是正の方向に向かっていました。

ドル不足でもないのに、ドル買いが強まるという異常な状態を矯正しようとする力が働いていたのです。

ここで、もしアメリカが金利高の原因となった「使い過ぎ=超過需要」の状態を自ら是正していれば、状況は変わっていたでしょう。

だが、アメリカはそれよりも「秩序あるドル安」の方を選びました。

その他のG7諸国も、アメリカの内外不均衡解消が本質的な問題だとはしながらも、さしあたりはドル高是正に向かって協調体制をとることで合意したのです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月27日

プラザ合意の必要性

1971年8月15日の出来事がいわゆる「ニクソン・ショック」。

その後、あらためて1ドル=360円というレートで固定相場制に復帰しようとする試みがあった(スミソニアン・レートの時代)が、結局はうまくいかず、1973年からは変動相場制の時代に入りました。

それ以降、ドルはかつての360円から260円へ、そして1978年には180円割れへと下落していきました。

だが、1980年代に入ると意外にもドルがまたもや上昇しはじめました。

アメリカの金利が高騰したからです。

資金というものは金利が低いところから高いところへ移動します。

これは当然のことだ。

アメリカの金利が他の国々の金利に比べて高ければ、誰もがアメリカに資金をもっていきます。

したがってドル需要が増えてドル相場が上昇することになるわけです。

それでは、なぜアメリカの金利は上昇したか。

その原因は「レーガノミックス」にあります。

すでに指摘した通り、レーガン大統領は就任早々に大減税を実施しました。

その結果としてアメリカ産業の起死回生が実現されるはずだったが、これがとんでもない見込み違いでした。

需要超過の経済が出現してしまったのです。

需要超過とはいいかえれば使い過ぎの状態でした。

収入と支出の関係でいえば支出が収入を上回って赤字になっている、つまり資金不足の状態にあるということです。

資金が不足しているのだから、アメリカの金利は高くならざるを得ませんでした。

高金利によって海外から資金を吸収しなければ経済が立ちいかない状態になっていたからです。

こうして、借金大国の通貨の為替レートが上昇するという奇妙な現象が起きました。

このドル高が輸入価格の上昇を阻止し、輸入の拡大を促すことによって、アメリカ国内の超過需要がインフレ圧力の噴出につながるのを防ぐ役割を果たしました。

大木一雄(経済クリティック)
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2010年10月26日

当時のアメリカ

1960年、当時のアメリカは金について1オンス=35ドルという公定価格を設定していました。

ということは、海外の諸国から要求された場倉は、彼らが保有しているドルをいつでも1オンス=35ドルで金に交換いたしますと保証していたということです。

このことが固定為替製をうまく機能させて、ドルを基軸とする通貨体制を維持していくための土台となっていました。

それにもかかわらず、自由市場では金の価格がどんどん上昇しはじめたのです。

なぜそうなったか。

アメリカ以外の国々にドルがたまるようになると、はたしてアメリカは本当に1オンス=35ドルで金とドルとの交換に応じることができるかど、つかということについて、人々が不安を抱くようになったからです。

だから、早めに金に乗り換えてしまおうということで、金市場に買い手が殺倒したのです。

このような状態になって、それでもなお固定相場を維持しようとすれば、「ドル過剰」を是正するための手立てを講じなければならない、事実、そのための「ドル防衛」措置がいろいろ講じられたが、結局守りきることができず、1971年8月、アメリカはついに1オンス=35ドルを保証するという体制を放棄すると宣言しました。

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2010年10月25日

ドル不足・ドル過剰

為替レートについてお話ししたあとは、ドルの歴史を簡単にみておこうと思います。

そこには、プラザ合意以降に、なぜあれだけ劇的にドル安が進まなければならなかったか、なぜブラック・マンデーは起きたのか。

そしてまた、いまなぜ、再び円安・ドル高の状態に回帰しようとしているのかを解明する鍵を見出すことができるのです。

第二次世界大戦後、日本をはじめフランス、西ドイツなど工業諸国の経済はことごとく崩壊したが、アメリカだけは健在でした。

そこで世界各国は経済の再建のため、こぞってアメリカから資本財を買い、資材を調達し、技術やノウハウの導入をはかろうとした。

農産物や食糧もアメリカから買った。

そのため、ドルに対する需要はものすごく大きくなりました。

いわゆる「ドル不足」の時代です。

1960年頃までこんな状態が続いた。

しかし、戦後復興も終わり、日本や西ドイツの重化学工業がアメリカに対抗できるようになると様相は変わった。

とくに、アメリカがベトナム戦争に介入してからは、アメリカからモノを買う国が減り、アメリカにモノを売る国が増えた。

当然、アメリカの国際収支は悪化し、アメリカにモノを売る国々にはドルがどんどんたまるようになった。

「ドル不足」の時代の終わりです。

一転して「ドル危機」の時代がきました。

「ドル過剰」時代といういい方をしてもいいでしょう。

各国があり余るほどのドルを手にするようになったのです。

こうなれば、ドルに対する需給は当然緩和するから、ドル相場を下げる圧力が働くことになります。

だが、当時はいわゆる固定暮相場制の時代で、ドルの為替レートが市場の需給関係を反映して変化するという状況ではなかった。

そのかわりに何が起こったかというと、金の市場価格が急騰したのです。

そのはしりが1960年でした。

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2010年10月24日

為替レートについての続き

国際的な市場で、もしドル以外の通貨では買物ができないということであれば、ドルに対する需要が高まりドルは高くなります。

人々がドル建ての資産をたくさん持ちたいと思えば、やはりドル需要が強まるからドルが上昇します。

このようにドルに対する需給関係がドルの為替レートを決めるという面もあるのだ。

かつてアメリカが世界の工場といわれた時期があった。

こんな時代にはアメリカの工業製品を買うために世界の国々はドルがい亀でも必要だったから、ドルの為替レートは高かったのです。

購買力平価は購買力の相対関係という一つの要因によって決まりますが、需給関係はその時の市場環境や人々の思惑、政治要因、金利格差など、様々な要因に規定されて動きます。

そして、購買力関係というこの二つの力がある時は綱引きをしたり、またある時には同じ方向に向かって動いたりする中で現実の為替レートが決まるわけです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月23日

為替レートが決まる要因

円高ドル安とは為替レートの相対関係を意味しているが、そもそも為替レートとは何でしょうか。

詳しく知っている読者は、ここは、飛ばして読んでいただいてさしつかえない。

為替レートとは、簡単にいえば、ある国の通貨と別の国の通貨の交換比率です。

別のいい方をすれば、ある通貨の一単位(たとえば1ドル)でどれだけのものが買えるかという、その通貨の購買力と他国の通貨の購買力の比率が為替レートです。

具体的にいうと、1ドルで買えるものと、200円で買えるものが同じであれば1ドル=200円の為替レートが妥当ということになるわけです。

このように購買力で決まる為替レートが購買力平価というものだ。

購買力平価説という考え方によれば、為替レートは常にこの購買力平価が成立する水準に落ち着くといわれる。

まあ、常識的に考えて、購買力の比較で決まるというのだから一番わかりやすいし納得できる。

その意味でこれは為替レートを決めるもっとも基礎的な要因だと考えていいでしょう。

ところが、購買力平価方式で算出した現在の円・ドル為替レートは1ドル=220円くらいだという計算結果があります。

この計算結果がどの程度正確なものかどうかはともかくとして、1ドル=220円という為替レートが現実の為替相場と大きくかけ離れているのは明らかだ。

つまり、為替レートは購買力平価だけで決まっているのではないのです。

大木一雄(経済クリティック)
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2010年10月22日

円高ドル安の秘密関係

円高が日本の産業を破壊してしまうのなら、円高の進行をどうにかできなかったのでしょうか。

空洞化につながる海外展開という道を企業が選択せざるを得なくなる前に、円高に歯止めをかけることができなかったのか。

もっともな疑問だが、話はそれほど簡単ではない。

だいいちそんなことができるなら、経済の腕力では世界一の日本のことだ、これまでに何か対策を講じていたでしょう。

ところが、何もできず円高への流れに身を委ねるしかありませんでした。

なぜでしょうか。

このあたりのメカニズムについては、『繁栄経済の落とし穴』(前出)で詳しく論じたが、この本の読者のために、ここで概略をスケッチしておこうと思います。

なぜ簡単にいかないかというと、アメリカには「双子の赤字」というドル安要因があり、日本には「対外収支の大幅黒字」という円高要因があったからです。

円高はこの大きな不均衡を矯正しようとする市場の力が形となって表われた姿だったのです。

市場経済というもののメカニズムの中では、常に不均衡を是正しようとする力が働いています。

人間の体の中にウイルスと戦う機能が内蔵されているのと同じようなものだ。

その力は様々な形をとって顕在化する。

そのひとつが為替レートの変化であり、プラザ合意後の円高はその典型的なケースでした。

ではなぜ、円が高くなりドルが安くならなければならなかったか。

これを理解するためには為替レートが何によって決まるかということをよく知っていなくてはならない。

いい方をかえれば、円高ドル安を動かしてきた力を知らなくてはならないのです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月21日

円高に合理的に対応

輸入品をうまく活用すれば、円高に対応して合理的に経済活動を営み、メリットを享受できる半面、国内の産業が壊れていくというプロセスがあるのです。

こうしたダイナミックな構造変化に目をつぶり、円高メリット、金持ちニッポンの側面だけを声高に強調するのは片手落ちの議論というべきでしょう。

日本の企業は、円高以降、円高に巧妙に対応すればするほど、産業崩壊のブラックホールに引きずり込まれるプロセスを確実に歩んできた。

それは誰も否定できないはずだ。

これに対して、日本は製造業が弱体化しても金融大国になっていくから大丈夫という議論があるが、それがいかにむなしい幻想か、第三章で詳しく書くことにしよう。

産業王国だったイギリス、アメリカが金融大国となり、結局は、弱体化してきたように、日本がそのコースをたどっても同じ運命を歩むだけのことになるでしょう。

しかも、その場合に、日本が強い立場をエンジョイできる期間はイギリスやアメリカよりはるかに短いと考えられるのだ。

そもそも、いまの日本の実力を持ってして金融大国としで実際に君臨できるかというと、そのこと自体がとても無理そうです。

なぜなら、金融大国として本当に力を持つためには、やはり経済力だけではどうにもならないからです。

国力の柱である軍事力においても、国際舞台での政治力においても、日本に真の実力があると考えてくれている国は皆無です。

日本人の中にもそうした面で一流だと思っている人は少ないでしょう。

日本にあるのはいってみれば膨大な量の「あぶくゼニ」だけです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月20日

日本が金融大国だけではやっていけない理由

これまで円高のマイナス面ばかり強調してきたが、もちろんプラス面もあります。

既に述べたが、まず、輸入品が国内品より安くなるのだから、企業はこれまで国内で調達していた資材を海外から安く輸入できるようになる。

デパートやスーパーなども安い輸入品をどんどん入れるようになった。

この結果、企業はコストを低く抑えることができるので業績が良くなるし、また消費者も安い製品を手にすることができるので、実質的に所得が増えたことになります。

生産者も消費者も円高の恩恵を十分享受できるというわけです。

円高メリット論です。

これは確かにその通りだが、しかし長い目でみれば、もう一つの側面である産業の空洞化という問題が浮かび上がってくるのです。

空洞化の本番はこれからです。

その過程では、輸入品に負けた企業や産業は市場からの撤退を余儀なくされるし、一方で輸出需要が縮小すれば、日本国内における産業活動は縮小していくことになります。

産業の規模が縮小すれば、雇用水準が落ちていき、給料の伸びも低くなってくるでしょう。

人々の所得が伸びなくなれば、いくら安い輸入品が入ってきても、そうそう欲しいものを欲しいだけ買うというわけにはいかなくなる。

景気も停滞しがちになります。

大木一雄(経済クリティック)
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2010年10月19日

進出先が発展途上国の場合

進出先が発展途上国であれば、特に現地調達は難しいでしょう。

したがって、企業の海外現地進出が活発化した当初には、むしろそれにともなって機械機器など資本財の進出現地への輸出が増える傾向があります。

こうして、企業の国際化は、一時期むしろ輸出を加速させる方向に働く。

だが、実際に現地工場が稼働態勢に入り、生産が軌道に乗れば状況は逆転する。

資本財の輸出にはブレーキがかかる。

そして、逆に海外工場から国内に商品が逆輸入されるようになるから、国内の生産は圧迫され、雇用機会も減ることになります。

逆輸入までいかない場合でも、海外工場からの供給が増えれば輸出は停滞することにならざるを得ません。

ここからが空洞化の本番です。

さきに紹介した松下電器産業の場合もそうだが、多くの日本企業が逆輸入本格化のターゲットを1990年代の前半に置いています。

これまでは工場をつくり、人を集めて生産体制を整える準備段階だったのです。

その果実が90年代に入って次々と顕在化してくることになります。

ちなみに、日立製作所も向こう4年間で輸入額を倍増させるという松下電器とよく似た方針を発表しています。

目標年次は1993年でした。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月18日

空洞化の影響

産業の空洞化は幻想だったということがいわれはじめています。

輸出から海外生産への切り替えで国内の雇用機会が減るかと思えば、逆にいまの日本は空前の人手不足状態になっています。

輸出そのものにも、深刻な打撃を受けている様子はみられない。

日本製品は相変らず海外で強い競争力を発揮しています。

国内の設備投資も極めて好調であり、生産の海外移転にともなって国内での投資が停滞する様子もない。

空洞化、恐るるに足らずというわけです。

しかし、これはあまりにも近視眼的な見方だ。

産業の空洞化という現象は一夜にして進むものではありません。

アメリカ産業の調子がおかしくなりだしてから、その国際競争力の低下が誰の目にも明らかになるまでには、短めにみても十年は経過しているのだ。

何事にも順序というものがあります。

生産拠点の海外への移転が空洞化を招くといっても、一足飛びにそこまでいってしまうわけではないのです。

海外に工場を開設するためには何が必要か。

各種の機械や資材を取りそろえなければならないでしょう。

ある程度のものは現地で調達するとしても、全てを現地調達でまかなうわけにはいかないのです。

大木一雄(経済クリティック)
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2010年10月17日

産業基盤と弱体化

企業の対応は恐るべきピッチで進んできています。

海外で売れるモノをどこまで海外でつくれるか、国内の市場で売るモノをどこまで海外から調達できるかが日本企業の重大な関心事になった。

これまでの日本経済では考えられなかったようなことが起こったのです。

私の前著『繁栄経済の落とし穴』でも紹介したが、昨年だけをとっても、挙げていけばキリがないほどの企業が生産の現地化に踏み切っていきました。

シャープの電卓、キヤノンの複写機、シチズン時計やカシオ計算機の時計生産など、多種多様な生産現地化計画が相次いで発表されました。

自動車業界では三菱自動車工業の「多国籍車」構想が話題を呼んだ。

一方、「国内市場で売るモノ、国内での生産のために利用する部品資材をどこまで海外から調達できるか」という、もうひとつのテーマについても著しい進展がみられる。

その傾向がとくにめざましかったのは自動車業界だが、家電業界でもその傾向は強い。

たとえば、松下電器産業は今年に入って1993年度までに部品や製品の輸入額を現在の二倍に拡大するという思い切った計画を発表しています。

海外工場で生産している自社製品を国内に持ち込んで販売するという典型的な「逆輸入」がそのひ必っの柱になっており、国内でつくる製品に組み込む部品・資材についても海外からの調達を増やすということです。

一方で輸出額は現在レベル以上に増やさず、五年後には、海外販売に占める海外生産の比率を50%までもっていく方針だそうです。

自動車メーカーの場合には、自社の海外工場で生産した車種の逆輸入もあるが、系列販売網を通じて欧米メーカーの製品を売るという文字通りの輸入車販売ビジネスが大きく伸びはじめています。

外国産車を取り扱っている国内メーカーの輸入車販売台数は、1988年度が1万2700台だったが、今年は二万七千台程度に伸びるとみられているのです。

いわゆる開発輸入も海外生産のひとつの変形だといっていいでしょう。

これは、日本のメーカーや流通業者が海外の製造業者にデザインや製品企画を提供して製品化してもらい、その製品を輸入して自社の販売ルートに乗せるというやり方です。

こうして、かつては「国内で生産したものを海外市場で売る」ことに成長の最大の機会を求めていた日本企業が、いまやまったく逆の方向に進みだしています。

そのことが、日本経済全体としての輸入依存度を高め、産業基盤を弱体化させているのです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月16日

現地生産に乗り出した日本企業

これまでの円高対策の結果、日本経済にどんな変化が起こってきているのでしょうか。

円高になれば輸出品の値段が高くなるので以前のように輸出を伸ばすことはできない。

だから、企業としては輸出に代わる事業展開を考えざるを得ないが、その結果、出てきた答えの一つが内需の開拓でした。

国内市場を拡大しようというわけです。

しかし、もともと日本の企業は国内市場と輸出市場の両方に依存してその存立をはかってきたのだから、急に内需だけでいけといわれても困る。

国内の市場をどう掘り起こしても、とても輸出分を吸収できるほどのキャパシティはないからです。

となると、国内市場のほかに新しい市場を求めざるを得ません。

これに対する答えが輪出から現地生産への切り替えでした。

輸出ができないなら、輸出先に直接乗り込んで生産体制をつくり、その市場に製品を流そうというわけです。

これなら円高デメリットは受けなくてすむ。

個別企業の対応としては当然の帰結といえるでしょう。

しかし、これを日本経済全体の問題としてとらえると、ちょっと困ったことになります。

第一に、日本国内の生産レベルが落ちる。

第二に、工場がなくなるから労働者が必要でなくなり全体として国内の雇用機会が縮小する。

第三に、たとえば国内で時計を造らなくなると時計の技術者が減り、技術レベルが落ちることでわかるように、ある産業の生産規模が縮小すればその技術が廃れていくことは避け難い。

ほかにもマイナス面はいろいろあるが、こうしたことが製造業全体に起こってくれば日本の産業基盤は弱体化していくことにならざるを得ません。

日本企業が国際化というテーマを追求し続ける限り、マクロ経済的にみた産業の空洞化をくいとめることはできないのです。

だからといって、企業が海外に展開するのをストップさせるわけにはいかない。

個別企業にとって、国際化をいかにうまく進めていくかは競争力を維持していくための最も重要な命題になっています。

後戻りするわけにはいかない。

ここが難しいところなのです。

大木一雄(経済クリティック)

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2010年10月15日

相場水準について

前川・・・・・相場水準については、もちろんいくらがいいということもなかなかいえないわけですけれども、先日のべーカー・宮沢共同宣言によれば、現在の為替相場が、いまや各国の基礎的諸条件とおおむね合致するものであるという評価がなされているわけでありまして、「いまの水準がほぼ基礎的な条件におおむねマッチする」という表現は、非常に注意深く書かれたものであるわけですが、私も、為替相場の安定が経済発展のためにはどうしても必要であるということであるならば、やはりこういう水準で安定してくれることがいちばんいいのではないかというように考えます。

司会(大木一雄)・・・・・もうおひとかた、チューリッヒから衛星中継で参加していただいたロイトビラーさんの、為替相場の見通しの基本的考え方をうかがいます。

ロイトビラー・・・・・これは私の個人的な推測ですが、日本の皆さんが最も興味をおもちの1987年の円ドルレートは、150円と170円の間の変動であろうと思います。

もし、日米経済政策が現状のまま変わらなければ、150円近く、あるいはそれを超えることになるかもしれません。

一方、もし両国がお互いの対外不均衡を他の手段で調整する努力をするならば、170円かそれよりも円安であっていいと思います。

司会(大木一雄)・・・・・ありがとうございました。
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2010年10月14日

為替相場の安定化

前川・・・・・ソロモンさんもいわれたように、相場について申し上げることは、いろいろと問題がありますし、それだけの自信もありませんから、相場水準について申し上げることはできません。

けれども、最近の日本に起きているいくつかの現象からみて、為替相場が安定するということは、経済が順調に発展するためにはどうしても必要であろうと思うわけであります。

日本の国際収支については、なかなか黒字が減少しないわけですが、それにはいくつかの理由があり、皆様もご承知のような、Jカーブ効果であるとか、あるいは原油価格が下がっているとか、いろいろなことがあるわけです。

しかし、子細にみれば、日本の国際収支の黒字がピークに達し、そろそろ減少に近づいているといういくつかの証拠らしいものが出ているわけであります。

司会(大木一雄)・・・・・なるほど。

そういうことから、不均衡がさらに拡大し、為替相場が不安定になるということは、おそらく87年には起こらないのではないか。

むしろ、改善のほうに進むのではないかと考えます。

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2010年10月13日

大幅な協調介入はしない

司会(大木一雄)・・・・・ご意見が、私たちあるいはこの会場にいる皆様が非常に聞きたいポイントにだんだん近づいてきたようです。

87年、いままでのお話のように、不均衡の急速な解消がむずかしいとなりますと、為替相場の動向というものが大変気になります。

87年の為替相場をみるうえで留意すべきポイントはなんなのか、ご指摘いただけますでしょうか。

今度は、まずソロモンさんにお願いいたします。


ソロモン・・・・・私は、為替相場について予測するのは、あまり得意ではございません。

ニューヨーク連銀の総裁をしておりましたときも、また財務省の次官をしておりましたときにも、為替相場の予測というものはなかなかうまくいきませんでしたので、予測をすることはしたくないわけでございます。

しかし、民間入にもどりました現在、あえて試みてみたいと思います。

87年の終わりまでに、円が1ドル150円以上の円高にならないとおかしいと思います。

あるいは150円台で推移することも考えられます。

しかし、これは、個人的な考えでございまして、それほど確定的な予測ではございません。

司会(大木一雄)・・・・・そうなると予測されるうえで、最大の要因とお考えになっている点はなんでしょうか。

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2010年10月12日

米国の経常収支赤字縮小

司会(大木一雄)・・・・・ソロモンさんにおうかがいします。

G2とまでいわれるようになった最近の国際協調の進め方、これを中心にごらんになって、これから先の87年の政策協調というのはどういうように進められるとお考えになっていますか。

ソロモン・・・・・最近のG2の日米合意書は、非常に戦術的かつ一時的な協議の上に立った、狭い範囲の合意書であったと考えます。

基本的には、米国の財務長官の立場は、以前から表明していた彼の公式の考え方から少し方向転換いたしまして、これ以上のドル安を阻止し、その代わりに、日本における公定歩合を0.5%下げるという内容でございます。

しかしながら、この協調ということに対して、それほどコミットしたわけでございません。

とはいえ、いままでの立場からは、方向転換したことは間違いないわけであります。

87年を見通しますと、構造的な政策協調の面では、私には、それほど現実的な可能性はみつけられないわけです。

とくに主要なコンセンサス、または政治的な合意というもの、または日本において、米国を上回るような成長策がとられるかというとそうでもないということで、私は、それほど明るい材料はないと考えるわけであります。

司会(大木一雄)・・・・・はい。

しかし、もう少し限定的な合意書というものが、87年には生まれてくると考えます。

その合意書は、多分、形式といたしまして、貿易関係促進策、また二国間のいろいろな貿易上の合意書というものが出てくると思います。

これは、GATTの正式な協議を待たずに、二国間だけの関係で生まれてくると思います。

私は、多国間のほうがいいと思いますが、二国間という観念でも、これからは進展がみられると考えるわけであります。

私個人の意見としては、米国の経常収支の赤字は、それほど大幅には縮小しないと考えます。

貿易面におきましては、ある程度の進展は考えられますが、しかしながら、これから先、まだサービス収支面に悪化状況がみられますので、相殺してしまうのではないかと考えます。

ですから、大幅な改善は考えられません。

このような背景のもとで、私はまだドル安はつづくと考えます。

87年において、なんらかの進展は予想されますが、大幅なコンセンサスまたは政策の協調はみられないと考えられるからです。

司会(大木一雄)・・・・・ありがとうございます。

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2010年10月11日

経済構造調整

司会(大木一雄)・・・・・いまのロイトビラーさんのこ発言のなかにも「前川リポート」という言葉がございましたけれども、この問題について、前川さんにおたずねするのは次の質問のところでお願いいたします。

ロイトビラーさんもやはり政策協調のむずかしさを非常に強く指摘されておりましたけれども、これから87年、いったい政策協調、これはどのように進み、そしてどのような成果が期待できるとお考えでしょうか。


前川・・・・・これからの政策協調というのは、いまロイトビラーさんもいわれたように、世界経済の発展のためにはどうしても必要になってくるわけです。

ただ、87年中にそれがどのくらい進展するであろうかということについては、おそらく個別の問題、たとえば、為替相場が極端に変動するようなときに、かなりの協調行動が期待できるのではないかと考えます。

しかし、いちばん問題で必要なことは、基本的な経済政策間の整合性でありまして、それは多分に各国の経済が抱えている構造問題ということに関連するわけです。

ロイトビラーさんがおっしやったように、米国の場合は財政赤字であると思いますし、日本の場合には、日本の経済構造を輸出依存型から、内需主導型の経済構造に変えていくということが基本であろうと思います。

そのために、政府も構造改善調整、それから内需振興のために幾多の手を打っているわけですけれども、構造改善などはそう一朝一夕にしてできることではありません。

司会(大木一雄)・・・・・続きをお願いいします。

また、非常に痛みを伴うものであるということから、この構造改善が果たして希望どおり進展するかどうかは、ひとえに国民全体の、その問題に対する認識にかかっているのではないかと考えます。

先ほど申し上げましたように、私は、個別の問題に対する協調行動というのはかなり進展すると思いますけれども、基本的な政策の協調というものは、関係国政府首脳の、それこそ政治的な意思がどこまで働くかということにかかっているものだと思います。

日本は、少なくともその構造問題の調整のために非常な努力をしなければいけないと考えます。

司会(大木一雄)・・・・・ありがとうございます。

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2010年10月10日

世界全体のために

司会(大木一雄)・・・・・それではここで、先ほどチューリッヒと結んだ衛星中継でインタビューさせていただきました、スイス銀行の前総裁のロイトビラーさんのご意見をお聞きください。


ロイトビラー(前BlS・国際決済銀行総裁)・・・・・いま、世界にとって最大の問題は、米国の財政赤字です。

米国の経常赤字も、もとをただせばこの財政赤字が原因です。

このような膨大な赤字を何年も出しつづけられるのは、米国だからできるわけで、他の国にはとてもできない相談です。

米国政府、とくに財政当局は、歴史が繰り返される前に手を打つべきだと思います。

このままでは、70年代後半と同じように、ドルはさらに大幅に下落して、世界経済全体に深刻な打撃を与えることになりかねません。

処方箋はなにかといえば、現状から判断して、米国の財政当局は、歳出の削減と増税、この両方を実行すべきです。

米国の財政赤字は、現在、世界が抱えている最大の問題です。

この問題が解決され、米国自身が姿勢をたださない限り、国際的な協調など実現もしないし、また成功もしないでしょう。

日本の大幅な貿易黒字については、それが産業の優秀さと、労働力の効率の高さの結果である限り、それを責めることはできないと思います。


司会(大木一雄)・・・・・はい。


しかし、ひと言申し上げたいのは、市場をもっと開放しようという姿勢がなかなかみられないことです。

私は、一スイス人として、スイスでは日本からの輸入に対して何も制限はしていないことを強く強調したいと思います。

日本の経済政策について何かを提案することは、外国人にとって普通はなかなかむずかしいことです。

しかし、私にとっては、「前川リポート」という格好の材料があります。

ここに書かれた提案の、文字通り一語一語に、私は全面的に賛成の意を表したいと思います。

とくに内需の拡大については、ぜひこれを実現していただきたいと思います。

それは、日本にとってばかりでなく、世界全体にとっても非常に望ましいことなのです。
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2010年10月09日

為替相場

ソロモン・・・・・(前ニューヨーク連邦準備銀行総裁)私は、ある程度の進歩はみられたと思います。

とくに、為替相場においては、「プラザ合意」によって、なんらかの実は結んだと考えます。

しかしながら、基本的な協調という観点では、まだ十分討議がなされておりませんし、その観点におきましては、米国は財政赤字については十分な策をとっておりません。

昨年の歳出は、ある程度抑制されてはおりましたが、まだ財政赤字という問題は解決されておりません。

GNP比率ということでみても、ある程度抑えただけであります。

他方、西ドイッ政府、または日本政府におきましても、積極的な策が欠如しているわけであります。

この「プラザ合意」によって内需拡大がうたわれたにもかかわらず、それがまだ明確になっていないわけであります。

司会(大木一雄)・・・・・なるほど。

今日、このような不均衡の幅は、大幅なものであります。

米国の赤字幅、西ドイツおよび日本の黒字幅は、大変な不均衡で、その是正に必要なのは、米国においては財政引き締め策、また西ドイツと日本におきましては拡大政策ー1これらの政策の継続的な調整であります。

私自身は、こうした基本的な政策調整が行われる見込みについて、いささか懐疑的であります。

実際に、継続的な、また一貫性をもった政策がとられるかどうかということに対しては、懸念をもつわけでございます。

この点については、まだパブリック・コンセンサスというものが存在いたしません。

司会(大木一雄)・・・・・はい。

専門家同士で合意したとしても、それは国民的レベルのコンセンサスではありません。

米国におきましても、学者のなかには財政赤字に対するコンセンサスがあるわけですが、政治的には、その意欲は今日まで欠如しております。

歳出のレベルを三年間一定に抑えますと、国内貯蓄で資金がまかなえるほど財政赤字が低減すると思われます。

一方、西ドイツにおいても、日本におきましてもコンセンサスが欠けていると思います。

とくに西ドイッではそれが非常に顕著だと思います。

のちほどまた、これについてはふれたいと思います。

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2010年10月08日

協調体制は前進

前川(前日本銀行総裁)・・・・・1985年9月の、いわゆるプラザホテルの合意というのは、ドル相場がその当時実勢以上に強く、市場で高く評価されていたことに対する修正のための合意であったと思います。

つまり、為替市場、為替相場の安定という、個別の目標に対する具体的な共同合意であったと考えるわけであります。

しかし問題は、先進国間の経済政策の整合性がとられることが、為替の安定のためには不可欠であるということでありまして、1986年5月の東京サミットにおきまして、先進国間の政策協調の必要性ということが強調されたわけであります。

なかんずく、基本的な構造問題、各国が抱えている構造問題の解決が必要であり、その基本的な経済政策の間の整合性を保つために、7力国間の多角的な監視の仕組みが合意されたわけであります。

司会(大木一雄)・・・・・はい。

それにもとづきまして、9月に7力国の最初の会議が行われたわけですが、そういった基本的な政策の間の整合性を実現するためのひとつの表れとして、べーカー米財務長官と宮沢大蔵大臣との間の合意も行われたわけであります。

その後、日本は内需拡大のためにいろいろな手段を講ずる、アメリカも財政赤字削減のための手段を講ずることが基本的に背景としてあり、その背景の上に立って為替相場を安定させていこうということが合意されたわけでございます。

そういう意味で、各国間の経済政策の協調体制というのは、仕組みはすでにでき上がっており、それに向かって少しずつ前進しつつあるというのが現状であろうと考えます。

司会(大木一雄)・・・・・ソロモンさん、前川さんは前向きの評価をされていますが、ソロモンさんのご意見はいかがですか。


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2010年10月07日

貿易摩擦・国際収支の不均衡

司会(大木一雄)・・・・・ごらんいただきましたように、膨大な国際収支の不均衡、そして貿易摩擦は、いっこうに解消する気配がありません。

そしてそのなかで、なかなか足もとが定まらない先進国間の協調・・・・・。

これで果たして、地球経済が安全に運営されていくのでしょうか。

日本、そして世界は、この様子に不安を抱きながらみつめ、そして87年に入っていこうとしております。

その87年の展開を見通すために、きょうは会場に世界の主な中央銀行の前総裁と、国際通貨金融政策で日本政府を代表する大蔵省の財務官にご登場願いました。

ご紹介いたします。

私のすぐお隣から、ニューヨーク連邦準備銀行の前総裁のソロモンさんです。

そのお隣が、日本銀行の前総裁、前川さんでいらっしゃいます。

私からいちばん遠くにおられるのが、大蔵省財務官、行天さんでいらつしゃいます。

行天さんには、この討論が終わったあと、のちほどコメントをいただくことになっております。

そして、衛星中継で録画いたしました、スイス銀行の前総裁、そしてBIS(国際決済銀行)の前総裁でもありますロイトビラーさんにも、この番組にVTRのかたちで参加していただきます。

それではまず、前川さんとソロモンさんに、最初の質問をさせていただきます。

先ほどもございましたが、85年9月のいわゆる「プラザ合意」以来、1年3ヵ月たっております。

これを振り返りまして、各国がこれまで共同してとってきた、あるいは単独でとってきたいろいろな政策、とくに東京サミットでの合意、また最近の日米共同声明にみられる合意、これをどう評価されますか。

まず、前川さんからうかがいます。

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2010年10月06日

新たな展開

司会(大木一雄)・・・・・ただいまの歴史を振り返ってみても、そして前にもお話しいただきました磯村さんの世界の政治の流れというものからみましても、パックス・アメリカーナ、米国による世界平和という戦後世界の基本的な枠組みは揺らいできております。

そのなかで先進国はサミットを設けたり、あるいは、先ほど申し上げましたG5などの国際的なシステムを通じて、地球経済の体制立て直しを図ってまいりました。

ことにG5は、昨今の主要国の政策協調を進めていく場として、ドル高を是正し、摩擦の原因になっている国際的な不均衡の解消を図ろうとしております。

そしてこれによって、経済の急激な変動を回避する努力を重ねてきたわけであります。

まず、この摩擦のなかで大きな努力を傾け、そして時代の転換点をつくるきっかけになりました、85年9月のG5の会合、そしてその合意以来の動きをVTRでごらんください。



ナレーション85年9月、先進5力国の大蔵大臣らによる緊急会議がニューヨークで開かれました。

この会議、いわゆるG5では、米国の貿易赤宇など、国際収支の不均衡をなくすため、各国が協力して為替市場に積極的に介入してドル高を是正していくことが決まりました。

このため、7年間つづいたドル高時代は終わりを告げ、為替相場は円高ドル安が急テンポで進みました。

円相場の上昇率は、86年5月までのわずか8カ月間に50%にも達しました。

この間、各国が協調して金利を引き下げるなど、国際協調が進みました。

さらに5月の東京サミットでは、各国の経済政策協調をうたい上げた「東京経済宣言」が発表されました。

しかし米国は、巨額の財政赤字、貿易赤字という双子の赤字を抱え、各国に内需拡大を迫ったため、急激な円高に歯止めをかけようとする日本や、利下げを渋る西ドイツとの問て微妙な食い違いが生じました。

86年9月、宮沢大蔵大臣は突然米国へ向かいました。

国際協調に不協和音が出始めたころから、日米間の政策協調を進めるために、べ1力-米財務長官が極秘会談を申し入れてきたため。

てした。

この一年間、ドル安がつづいているにもかかわらず、86年の米国の貿易赤字は1,500億ドルに達する見込みです。

依然として巨大な国際不均衡を抱えた地球経済の前途は、楽観を許さない状態がつづいています。
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2010年10月05日

地球的リーダーシップの発揮

キンドルバーガー・・・・・日本に望むことは、アジア地域の経済発展に果たしてきた強いリーダーシップを、世界全体に向けて果たしてほしいということです。

日本は、これまで輸出主導型の経済成長を進めてきましたが、これからは一歩進んで、必要なときには世界に対して「最後の貸し手」の役割をかって出てほしいと思います。

日本は、自国の利益が侵されない限り、世界の大勢に従う優等生だったわけですが、米国が放棄しつつある世界のリーダーの役割を、日本や西ドイツが本当に肩代わりできるかどうかとなると、まだいろいろ問題があるでしょう。

歴史から学ぶべき教訓は、「最後の貸し手」が単に一国のなかだけでなく、国際的なレベルで必要だということです。

IMFでもいいのですが、なにぶんにも意思決定に時間がかかり過ぎます。

国際的な危機は、ときには数時間のうちに起こることもあります。

何カ月もかかって対応策を決めていたのではとても間に合いません。

このギャップを埋めるのに、いわゆるブリッジ・ローンも必要でしょう。

しかし、緊急の場合、中央銀行同士の資金スワップが有効でしょう。

とにかく、まず手を打って、あとで決済すれば、緊急の場合の効果は大きいはずです。



司会(大木一雄)・・・・・ただいまごらんいただきましたように、この100年余りの間に起きました過去二回の摩擦の失敗。

そしてその悲劇的な結末。

問題は、この教訓をわれわれが、いま地球を襲っている三回目の摩擦に、果たして生かすことができるかどうか、これが鍵になるところです。

第3部以降では、この点を、具体的に一つひとつ突きつめて討論してまいりたいと思います。

ありがとうございました。
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2010年10月04日

地球経済の課題

司会(大木一雄)・・・・・ただいま五つの研究所の方々から、それぞれ非常に短い時間ではございましたけれども、現在の世界経済を取り巻く最大の課題ということでおうかがいしました。

少しずつ表現の違いはあっても、なんといっても貿易摩擦の問題、これが地球経済の根底で大きな掩乱要因になっているということは否定できないようです。

そして、この貿易摩擦をうまく解決することができるかどうかが、われわれに課せられた大きな使命であることもご指摘いただきました。

中川さんのお話にもありましたように、歴史的にみますと、十九世紀の末から今日に至るたかだか一〇〇年ほどの間に、世界を巻き込む摩擦を三回数えることができます。

まず、この歴史を振り返ってみたいと思います。
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2010年10月03日

貿易摩擦

中川(野村総合研究所社長)・・・・・いま皆さんがいわれたのと、だいたい同意見です。

ひと言だけ、いま地球経済が当面しているいちばん大きな問題と思われるものを申し上げますと、国際間における大きな不均衡、それに伴って貿易摩擦が激化しているということだと思います。

これは今世紀三度目でございますが、今回のは一九七〇年代の初めから始まりまして、だんだん激化しているというところに問題の深刻さがあると思います。

日本は自由貿易でいちばん得をしている国ですから、この問題の帰趨がどうなるかということが、われわれの将来を決める非常に大きな問題ではないかと思っております。

司会(大木一雄)・・・・・ありがとうございました。
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2010年10月02日

農産物問題

司会(大木一雄)・・・・・ツーゲンハットさん、お願いいたします。



ツーゲンハット(イギリス/王立国際間題研究所会長)・・・・八七年の問題ですけれども、これは八六年の問題と似通っております。

米国の貿易赤字、日本の貿易黒字、保護主義の圧力、余剰農産物、国際的な累積債務、そして失業の問題であります。

しかし、このなかで八七年の最も大きな二つの問題というのは、日米の貿易不均衡、そして農産物がもたらす潜在的な問題であります。

もしかしたら、農産物問題が米国とECの貿易を混乱させてしまうかもしれませんし、さらにGATTの交渉を危機に陥れるかもしれません。

そして、この二つの問題は、政治的な動向とも深く関係しています。

米国大統領の権威失墜や、今後予定される西ドイツ、フランス、イギリスの選挙の動向などです。

もうひとつ心配している点は、金融市場の規制緩和による競争激化の影響であります。

世界のペーパー・クレジット制度がもつ潜在的な不安定性、またいざという場合、セーフ・ガードがあるのかという問題であります。

司会(大木一雄)・・・・・野村総合研究所、中川さん、お願いいたします。
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2010年10月01日

保護主義

司会(大木一雄)・・・・・モンブリアールさん、お願いいたします。

モンブリアール(フランス国際関係研究所長)・・・・・大木さん、どうもありがとうございます。

私は四つの関連した問題をあげてみたいと思います。

まず、各国経済をみた場合、非常に大きな不均衡状態があるということ。

米国には双子の赤字、つまり貿易赤字と財政赤字。

日本と西ドイツの場合は、貿易収支の黒字が大きいこと。

また、ラテンアメリカを中心とする累積債務問題があるということです。

そして、二番目の問題としては、世界経済を表す各種の指標が、不安定な状態にあることです。

為替や原油価格にしても、不安定な状態にあります。

これらの問題は、効果的な国際通貨制度がないということに原因があるのではないかと思います。

三番目に、ヨーロッパにおける失業の問題。

これは公共部門が肥大し、福祉国家によって市場が硬直化したことにより、産業構造の脆弱性がヨーロッパにもたらされたからです。

そして四番目に、保護主義の台頭がみられることです。

経済摩擦と政治的・戦略的問題が絡みつけられているということであります。

たとえば、米国の在韓、在欧軍の負担を分担させるといった、経済と安全保障をリンクさせた問題です。

長期的にみると、これが四つのなかで最も重要な問題といえるのではないでしょうか。
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2010年09月30日

地球経済上の問題

ラウマー(西ドイツ/lFO経済研究所理事)・・・・・私の観点から申し上げますと、現在のところ、地球経済上の問題が二つございます。

すなわち、各国の経常収支の不均衡と貿易摩擦でございます。

米国の経・常収支の赤字額と日本と西ドイツの黒字額は大幅なもので、米国が深刻な不況に陥らない限り、短期間で根本的な改善をみることはほとんど不可能であると考えます。

そのような解決はだれの利益にもなりません。

他方、経常収支の不均衡は、世界中に保護貿易主義的なさまざまな手段を講じさせ、深刻な貿易摩擦を引き起こすことになります。

しかし、歴史がわれわれに教訓として与えましたことは、保護貿易主義からはなんら学びとることがないことであります。

司会(大木一雄)・・・・・といいますと。

主要貿易国がこのような問題を解決するためには、やはり国際協調というものが必要です。

そのためには、たとえば、為替相場の安定化も必要であります。

このような問題を解決する強い意思を私たちがもつなら、その解決策はおのずから生まれてくると思います。
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2010年09月29日

経済構造の調整

経済構造を調整し、また経済政策を協調していくということは決して容易なことではありません。

柔軟な姿勢が必要です。

経済体制は柔軟に、そして常に変化に対応していく姿勢が必要であり、政治的なリーダーシップが内外で必要です。

何をすべきかを知り、そして実行できるリーダーが必要です。

もちろん、すべての車輪が同じ方向に進んでいないからといって、国際経済という自動車そのものが衝突してしまうわけではないかもしれません。

しかし、非常に揺れが激しく、しかも遅々とした乗り心地になるということです。

どうしても政策の協調が必要だと思います。


司会(大木一雄)・・・・・IFOのラウマーさん、お願いいたします。

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2010年09月28日

大きな課題

マクローリー(米国/ブルッキングス研究所長)・・・・・どうもありがとうございます。

私のみるところ、現在、世界経済に対するいちばん大きな課題といいますと、各国が構造調整をしていくことではないかと思います。

自動車と同じように、世界経済がスムーズに前進していくためには、すべての車輪が同じ方向に向かっていなければならないわけですけれども、自動車と違いますのは、世界経済の場合には運転手が一人ではないということです。

ということは、われわれは、どの方向に進んでいくのか、そしてどういう政策でその方向に進んでいくのかという点で、合意していかなければならないということです。

現在、その車輪は全く違う方向に進もうとしております。

とくに米国の場合には、財政赤字をコントロールできる状態にはありません。

そして、日本も西ドイツもあまりに輸出依存型の成長に依存し過ぎております。

一部のNICSにしても同じ問題があります。

また、開発途上国さらには社会主義諸国でも、市場経済の方向にいまようやく進もうとしております。



司会(大木一雄)・・・・・なるほど。

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2010年09月27日

討論

1965年に設立された、わが国最大の民間研究機関、野村総合研究所。

東京、米国、ヨーロッパ、東南アジアを結ぶグローバルなリサーチネットワークを生かした国際経済分析と未来予測に、内外から高い評価を得ています。

司会(大木一雄)・・・・・野村総合研究所からは、中川社長です。

それでは私も討論の場に席を移させていただきまして、早速討論に入りたいと思います。

本日はようこそお越しくださいました。

このように、五つの研究所―われわれ民間版G5と呼ばせていただきますがの皆様が勢ぞろいいたしました。



司会(大木一雄)・・・・・皆さんの研究所では、われわれが本日の最大のテーマとしてとらえた地球経済というものをどのように評価されておられますか。

そして、解決すべき最大の問題点は何だとお考えでしょうか。

この問題から、それぞれお言葉をちょうだいしてまいりたいと思います。

まず、プルッキングスのマクローリーさん、お願いいたします。

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2010年09月26日

紹介2

パリの市街地にあるフランス国際関係研究所は国際政治分析に重点をおいた研究所で、八六年にはソ連の最近の対西ヨーロッパ政策やSDIの影響を各国と共同研究し、高い評価を得ております。

司会(大木一雄)・・・・・フランス国際関係研究所のモンプリアール所長です。



ロンドンの繁華街、ピカデリー・サーカスの近くにある王立国際問題研究所は、歴史家、アーノル.卜・トインビーを生んだ由緒ある研究所てす。

伝統を受け継ぎ、未来に生かすため、二十一世紀の国際関係の調査に取り組んでいます。

司会(大木一雄)・・・・・イギリスの王立国際問題研究所からは、ツーゲンハット会長です。

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2010年09月25日

紹介1

ワシントンのブルッキングス研究所は、一九二七年に設立された米国最大の政策研究機関です。

とくに経済分析と外交問題の調査では定評があります。

司会(大木一雄)・・・・・ブルッキングス研究所、マクローリー所長です。



ミュンヘンにあるIFO経済研究所は、産業と経済の調査で西ドイツ最大の研究機関です。

IFOが毎月一万社以上の西ドイツ企業のアンケート調査をもとに作成している景気動向調査は、西ドイツ経済を知るうえで最も信頼できる資料として、高い評価を得ています。

司会(大木一雄)・・・・・IFO経済研究所からはラウマー理事です。

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2010年09月24日

経済が世界の命運を握る

司会(大木一雄)・・・・・経済が世界の命運を握っているなか、そして日本がその要のひとつになろうとしているいま、私どもは新たに地球的な規模でこの時代を見通す視点をもたなければならないと思います。

そこで本日の第2部では、世界の五大国、日、米、独、仏、英のそれぞれが誇る五大研究所の頭脳、そして著名な政治指導者や経済界の方々の目を通して、地球経済の新しい姿を見通していきたいと存じます。

いま、世界の経済の舵取りをしている最も重要な場のひとつが、いわゆるG5、この五大国の大蔵大臣と中央銀行の総裁でつくっている秘密の会議ですけれども、本日のフォーラムは、まさにこのG5の民間版といえると思います。

それを代表される方々に、本日これから登場していただきます。

そして、日、米、独の三つの研究所による最新の経済予測も、のちほどご紹介させていただきます。

それでは、地球経済を世界の頭脳がどうとらえているのか、五大研究所のトップに登場していただきます。
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2010年09月18日

再構築

司会(大木一雄)・・・・・それではつづいて、モンブリアールさん、お願いいたします。


モンブリアール・・・・・いろいろな問題が現在ありますけれども、これらの問題は、第二次大戦後につくられた国際的な経済制度、すなわちIMFとGATT体制が破綻していることに関連していると思います。

来たる四半世紀の間、平和を維持していくためには、やはりそういった秩序を再現していかなければなりません。

ここで、二つ重要なことがあります。

ひとつは、しっかりした国際通貨制度を再構築するということ、そしてもうひとつは、本当の意味で多国的な貿易体制というものをつくっていくことです。

ここ一〇年の間、いわゆる二国間主義が頭をもたげてきましたけれども、不健全な二国間主義はやめるべきでしょう。

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2010年09月17日

世界的な経済拡大

ラウマー・・・・・・二十一世紀までの一五年間を展望すると、次に述べるいくつかの論点が出てくるでしょう。

まず最初に、恒久かつ信用のおける経済政策の協調が肝要だと思います。

ただ、この考え方は、あくまでも米国がパートナー国への政策影響を考慮したうえで、責任ある、かつ安定的な経済政策を実施することを前提としております。

二番目に、持続的な経済拡大を全世界的に実現することが必要であります。

一貫性をもったかたちで先進諸国が原材料に対する需要を高め、自国の市場を開放していくことこそが途上国の助けになるでありましょう。

そして、もし日本とヨーロッパの経済成長が高まれば、米国の国際収支も改善されるでありましょう。

西ドイツの立場からみると、米国が要求しているような景気拡大策は、インフレなき成長をもたらすとは思われません。

ですから、西ドイツ政府は経済成長のための条件づくりをつづけていくべきです。

個人や法人に対しての税負担を軽減することも必要でしょう。

日本では、二十一世紀に向けてたどるべき道筋が、すでに「前川リポート」に明示されています。

日本の政府が、ぜひ「前川リポート」をステップ・バイ・ステップで実施することを望みます。

また、そのなかには、日本が開発援助をより積極的に行うということも含まれています。

日本版のマーシャル・プランというものも、真剣に考えるべきであると考えます。

また最後に、日本と西ドイツは米国を助けることはできるにしても、米国が直面している痛みに満ちた経済調整問題を解決してあげることはできません。

また米国は、生活水準の低下をまぬがれないでしょう。

しかし、一九九〇年までに財政赤字を減らすことが世界経済の健全さに不可欠です。



司会(大木一雄)・・・・・ありがとうございます。
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2010年09月16日

国際的レベルの政策協調

マクローリー・・・・・私はまずいちばん最初の提言として、してはならぬこと、やめるべきことを提言したいと思います。

第一点は、構造調整、そして政策の調整というものはどの国でも必要であります。

そのためには、まずみずからの国で責任ある対策を取るべきで、他国の非難をしてはならぬということであります。

第二点は、経済学者はこれまでサプライサイドとケインジアンの問で終わりなき論争を繰り返し、政策的な助言をしてきましたが、いまや明らかに構造調整策と調整刺激策の両方が必要だと思います。

それが、各国の適正な需要刺激策と相まって、現在の大変動期を未来につなげることになるのです。

米国についても重要なポイントがあります。

米国は、建設的な、そして実際的な方策をとることによって、むこう二〜三年間において財政赤字幅を縮小する必要があります。

それと同時に、日本と西ドイツには、輸出依存度を減じて内需振興で補うような構造調整をしていただきたいと思います。

第三点は、今日の不均衡状態を脱するのは困難を伴いますが、それを推進するには、拡大策をとる必要があります。

保護主義よりも市場開放策を優先させるべきですが、そのためには、国内的なシステムを用意する必要があります。

職を失う人や衰退産業をサポートする必要があります。

それは、GATT新ラウンドやIMFなどの国際機関をサポートすることになります。

この観点から、黒字国に主要な役割を果たしていただきたいと思います。

最後に、国際経済を軌道からそらさないための最も効率的な方法は、すでに合意をみている政策協調をつづけることです。

これは、新しいチャレンジではございませんが、最も緊急な問題であります。

なぜなら、相互依存関係が深まっているからです。

問題を解決するには、新しい国際機関をつくるよりも、既存のものをもう少し効率よく稼動させるほうが有効だと思われます。

最後に、きょうのフォーラムのような啓蒙活動は、正しい方向への第一歩だと思います。



司会(大木一雄)・・・・・ラウマーさん、お願いいたします。
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2010年09月15日

抱える課題〜by大木一雄

司会(大木一雄)・・・・・さて、私の不手際がありまして、順調にというわけにはいかず、やや遅れ気味にここまでまいりました。

私の朝のニュース番組ですと、ここで終わらせていただきますと申し上げないといけないのかもしれませんが、とくにきょうは会場にいらっしゃる皆様のご了解を得たうえで、最後の討議をつづけたいと思います。

また、あまり時間が遅くならないように、ご出席の皆様にも発言を簡明にしていただくよう、ご協力をお願いいたします。

これまで第1部から第6部まで進めてまいりました討論で、八七年の世界経済、地球経済がどのように動いていくのか、おおよその議論がほぼ出されました。

そしてそのアウトラインもなんとかみえてきたようであります。

しかし、なんとしても進めなければならないこの国際協調、その道のりは険しいということも、ここで司会(大木一雄)をしている私の実感でございます。

もう一度、五大研究所のトップの皆さんに、局面打開のための新しい方策について討論していただこうと思います。

それでは皆さんに、これまでの討論を踏まえて、とくにご提案を念頭において、おひとりずつご意見をお聞かせください。

まずマクローリーさんからお願いします。

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2010年09月14日

セーフティーネットの形成

鈴木・・・・・・セーフティーネットというのは少なくとも四つの段階が必要で、ひとつは、なんといってもこれは市場経済でありますから、市場の参加者が自己責任の原則に立ってきちんとした規律を守って自分でリスクを回避する、そして自分で創造的に動くということが大前提であります。

二番目には、しかしそうはいっても、規律を守らない市場参加者が出ないとは限りませんから、マーケットそのものがそういう規律を強制していくメカニズムを上手にビルト・インしなければいけない。

それはいわゆるディスクロージャー、企業業績の公開であり、それにもとつく企業の評価、いわゆるレイティング・システム、格付制度であります。

そういうものできちんと企業を格付けしたうえで、それにのっとって、皆さんが安心してその企業の発行する社債を買うといったようなことでなければならない。

そして三番目には、さらに市場に参加している金融機関のバランスシートについて最低限のルールを明示する。

自己資本比率でありますとか、大口融資規制の上限であるといった最低限のルールを明示する。

これは自由化に反する規制ではないのです。

これはマーケットメカニズムに沿ったルールづくりであります。

これがどうしても必要です。

そして最後には、世界恐慌の教訓を振り返るまでもなく、最後の土壇場のところでシステムを守るのは、中央銀行の「最後の貸し手」としての役割であります。

これについても、各国の中央銀行と、日本の中央銀行であります日本銀行とが十分に協力し合って、円建ての取引、外貨建ての取引のそれぞれについて、いったいどの国の中央銀行が「最後の貸し手」としての役割を果たして全体の安定性を維持するのか、この問題についてもまだまだ十分に話し合っていかなければいけない。

とくに、エレクトロニクスの発展に伴うエレクトロニックな決済システムの発展ということを考えますと、これは非常に大事な課題であると思われます。

以上でございます。



司会(大木一雄)・・・・・ありがとうございました。

世界を二四時間回りつづけ、働きつづけている日本のお金、その役割と、これからの役割の安定性の確保につきまして、お三方に討議していただきました。

また、田淵会長からご提案のありました東京クラブ常設、討論の場の設置の問題も、このあとの第7部にひきつづいて討議していただこうと思っております。

それでは第6部を、これで終わらせていただきます。

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